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三里塚 二〇一〇年三月供用を阻止しよう             かけはし2006.10.2号

北側延伸工事着工を許さない

住民の生活権を守れ!環境を破壊する危険な空港はいらない

9・15に強行
された着工式

 成田国際空港会社は暫定滑走路南側で生活する東峰農民の移転拒否の強い意志により、空港用地を確保できず、北側延伸工事を強行する。
 着工式(会社内講堂)が九月十五日、北側一雄国土交通相、堂本千葉県知事、自治体、地元推進派などが参加して行った。工事は、@平行滑走路を北側に三百二十m延伸して二五〇〇m化A平行滑走路の延伸に伴い、平行誘導路を北側に延伸するとともに、東側誘導路の新設(約五一〇〇m)Bエプロンの新設などで工事完成予定を二〇〇九年十月三十一日、供用開始予定を二〇一〇年三月三十一日としている。北側延伸工事費用は、約三百六十億円だ。
 空港会社のねらいは、平行滑走路にジャンボジェット機を飛ばすという脅迫による東峰住民に対する追い出しと営農活動への妨害、新誘導路建設のために入会地として利用してきた「東峰の森」の破壊、飛行コース下の住民への轟音と排気ガスのまき散らしのエスカレート、天神峰地区の市東孝雄氏(北原派)の畑の強奪攻撃である。われわれは、三里塚農民の生存権と環境を破壊する北側延伸工事強行を徹底的に糾弾する。平行滑走路供用と東峰の森破壊阻止を闘っていく決意である。

「成田の地盤沈
下」という悲鳴

 黒野空港会社社長は、記者会見(九月十一日)で三里塚農民の空港建設反対闘争に対する圧殺と追い出しの歴史、暫定滑走路供用を強行し(〇二年四月)、東峰住民の頭上四十mにジェット機を飛ばし、轟音と排気ガスをまき散らしてきたことをなんら反省することなく、「二五〇〇m滑走路の完成は一九七四年四月だった。『北延伸』ができても三十六年の遅れ。遅れを取り戻したいし、取り戻すためにどうするかを考えていかなくてはならない」と強圧的な発言を行った。そして、東峰住民の追い出しを押し進めていくために、「地域対策をどう進めるかについては、関係自治体などと従来にも増して密接に話し合いをしていく」と述べ、継続して地元推進派を動員しながら叩き出し包囲網を拡大していくことを通告してきた。こんな暴言を許すことはできない。
 さらに株式上場について、「当初〇七年度と言っていたが、『北伸』という不確定要素があったため断念した。〇八年か〇九年か、これから精査する」と述べ、二〇一〇年三月供用を前提にして株価を高くつり上げていこうと必死だ。
 資本のグローバリゼーションは国際空港としての完成度、利便性、二十四時間使用を要求する。黒野発言は三里塚農民の闘いによって空港の完全開港ができない状況にあり、しかし上海新空港、韓国の仁川国際空港などの大型空港が開港し、羽田空港も〇九年内の国際線供用開始をめざした四本目の滑走路が建設中であり、これ以上の東アジアの空港建設競争からの遅れによる成田空港の地位低下が許されないというギリギリの位置にあることを表現している。
 だから黒野は、「(工事は)二〇〇九年度末を厳守する。できればもっと早く完成させたい。二五〇〇mの滑走路で終わりというわけにはいかないのでは」と口約束をせざるをえいほど切羽詰まったところに追い込まれている。八月二十一日に行われた北側延伸工事のための公聴会では、白戸千葉県副知事の「東アジア諸国で大規模な国際空港の建設が進む中、早期に成田空港の機能充実を図ることが地域の発展に不可欠」という意見をはじめ、「このままではハブ空港として機能しない」、「成田空港が地盤沈下する」など「悲鳴」のオンパレードだった。
 しかし北延伸による国道五一号の付けかえ大工事を突貫でやったとしても、〇九年度末で終わるという根拠を提示できないというありさまだ。北側延伸工事着工をめぐる空港会社の脆弱性を暴き出し、二〇一〇年三月供用を阻止しよう。

安全面でも重
大な問題あり

 空港会社の当面する集中した攻撃の一つとして、新誘導路建設による「東峰の森」破壊がある。これまで空港会社は、東峰住民を追い出すためにペテンとウソの「話し合い」を呼びかけてきたが、ことごとく破産に追い込まれてきた。東峰地区全域を含む貨物基地構想(二〇〇三年)を打ち上げ、東峰地区の集団移転で追い出そうと企んだ。だが、東峰の森について「一方的に計画を策定し進めていくことはありません」(〇三年二月二〇日、空港公団)という回答書を出さざるをえなかった。〇五年には「国土交通省の北側延伸計画とは考えを異にする」などとポーズをとりながら欺瞞的な黒野「謝罪文」による懐柔策をもって東峰住民を追い出そうとしたが、これも失敗した。
 結局、東峰住民の闘いによって南側への延伸の道を断たれた空港会社は、北側への延伸を決定し国交省に報告(〇五年八月)、そして飛行場変更許可を申請し(〇六年七月)、八月に国交省が許可書を出すという経過をたどった。つまり、従来のような「話し合い」ではうまくいかないと判断し、突貫工事で〇九年十月工事を完成させ、一〇年三月に強行供用し、東峰住民の頭上にジャンボジェット機を飛ばすことによって物理的に叩き出そうとしているのだ。そして、このような圧力と一体なものとして、新誘導路建設をぶち上げ、東峰地区を鉄板フェンスで囲み、入会地である「東峰の森」を破壊しようとしている。
 東峰の森破壊に対して東峰住民は、すでに新誘導路建設に抗議する公開質問状を出した(八月三日)。空港会社は、「北伸は苦汁の選択だった」(八月十八日、回答書)と開き直ってきた。東峰住民は、こんな住民無視の回答を許さず、二回目の公開質問状を出した。「前回の質問状に対する回答は私たちの質問に正面から向き合ったものではなく、極めて不誠実だ」と厳しく糾弾し、北伸工事と新誘導路工事中止を要求している。東峰住民の闘いと連帯し、空港会社による生存権・環境破壊の実態を全国に伝え、北側延伸工事と東峰の森破壊阻止の陣形を作り出していこう。
 なお新誘導路は重大な事故を発生させる計画だ。この新誘導路建設に対して航空業界でさえも、@ジェット機が第二ターミナルからB滑走路の距離が三千メートルあり、自走によって多量の燃料を消費するためコスト高になってしまうA北側から着陸したジェット機がオーバーランした場合、誘導路に待機中のジェット機と接触事故の可能性があるなど、「安全面でも効率面でも大きな欠陥誘導路だ」と批判している。こんな誘導路は、世界には一つも存在していない。空港会社の安全性を無視した利益優先の新誘導路建設計画は中止しかないのだ。

市東氏の耕作権
強奪を糾弾する

 この新誘導路建設とセットで空港会社は、現在の暫定滑走路「へ」の字型誘導路の直線化と拡張にむけて天神峰地区の市東孝雄氏の畑の強奪攻撃を集中している。現在の「へ」の字型に曲っている誘導路ではジャンボジェット機が自走できないため、なんとしてでも直線化し、拡張をねらっている。
 北側延伸工事着工直前の九月十四日、千葉県農業会議は、市東さんの土地強奪のために成田国際空港会社が求めた耕作契約解除を認め、堂本暁子知事に答申した。さっそく堂本知事は、契約解除を許可する予定だ。畑の耕作権は、市東氏の祖父の代から続き九十年間耕してきたものだ。この耕作権強奪攻撃は、明らかに耕作者の権利を防衛してきた農地法違反であり、土地の強制収用に道を開くものだ。国交省・空港会社・堂本県政が一体となって、三里塚農民の耕作権・生存権を徹底的に破壊しつくそうとしている!
 そもそも「へ」の字型誘導路は、航空機事故が発生する可能性が十分に予想されていたにもかかわらず、安全よりも運行利益の論理を優先して使用してきた。すでに誘導路における飛行機接触事故(○二年十二月一日)、誘導路飛行機鉢合わせ事故(○四年六月十六日)が発生している。いずれの事故も、金儲け主義を優先した過密運航のために安全性と人命を軽視して、供用し続けている政府・空港会社の人災である。航空法施行規則では誘導路本体が幅二十三メートル以上、側帯が百十メートルと定めているが、実際の側帯の全体幅が九三・五メートルと基準よりも七・五メートルも狭い。ところが国交省は、安全根拠を示すことなく 供用優先を前提にして認可してしまったのだ。
 欠陥滑走路はこれだけではない。滑走路が短いためにオーバーラン事故(〇三年一月二十七日)、タイヤパンク事故(〇五年四月二十二日)が起きてしまっている。さらに管制塔の管制官から暫定滑走路の約40%しか直接目視できない。だから管制官はテレビカメラの映像で管制を行っている。北側に延伸すれば目視できない範囲はさらに広がり、危険は増えるのだ。
 このような欠陥事実を無視し、二〇〇九年十月三十一日の工事完成にむけて強引に押し進めていこうとしている。安全性を無視し、利益を優先した欠陥滑走路は即時閉鎖しかないのだ。

連絡会が緊急
抗議デモ行う

 三里塚・暫定滑走路に反対する連絡会は、九月十五日、空港会社の北側延伸工事強行着工に対して緊急抗議行動を行った。東峰から天神峰地区、暫定滑走路沿いのデモを貫徹した。欠陥空港のB滑走路の実態を暴き出していこう。闘う三里塚農民と連帯し、土地強制収用と闘う静岡空港反対派をはじめ全国の空港反対闘争と結びつきながら全国包囲を強化していかなければならない。三里塚現地の諸拠点、一坪共有地を守り抜こう。二〇一〇年三月供用阻止にむけて、共に闘おう!    (遠山裕樹)


静岡空港 県収用委第5回公開審理

「打ち切り」宣言に抗議し審議再開要求をつらぬく

 静岡県収用委員会は、九月二十日、第五回公開審理(静岡市・もくせい会館)で静岡空港建設に反対する檜林耕作さん、松本吉彦さん、村田利廣さんの茶畑、みかん畑を強制収用するために審理を一方的に打ちきるという暴挙を強行した。収用委の不当な審理運営は、石川県政と一体となって税金の無駄使い・環境破壊の静岡空港の開港を二〇〇九年三月に何がなんでも実現するために、「中立の立場で公正に審理」していくという表看板から、むき出しの暴力装置機関としての本当の姿を現しだしたということだ。
 第五回公開審理も収用委は、第四回公開審理と同様に、茶畑・みかん畑の損失補償審理を前半でやり、後半で山林部分の審理を行うと地権者分断審理を通告してきた。不当な審理に抗議しつつ、前半の審理では、本来地権者の檜林、松本、村田さんが県所有地との境界の不備、第35条調査時における違法行為などについて抗議の意見陳述を断固として行った。だが、起業者の県は、不備はなかった、整然と調査したなど書類を棒読みしただけであった。
 収用委員長は、今後の審理について委員会協議をすると表明して、休憩に入った。午後三時半、再開後、委員長は、突如、「地権者、起業者の意見を十分きくことができた。よって、審理を打ち切る」と宣言した。
 本来地権者の四人を先頭に、七十人の反対派は、猛然と抗議。収用委員たちは、逃げるように隠れてしまった。事務局職員、ガードマンが登場し、立ちふさがる。反対派は、ただちに抗議の意志表示として、席を離れず、審議再開を要求していった。
 反対派代表と収用委の協議が繰り返されたが、収用委は、茶畑・みかん畑の審理の打ち切りは変えないの一点張りだ。反対派は、このような不当な審理運営に対して、さらに怒りのボルテージを上げ、午後五時四十分、ついに公開審理を中止に追い込んだ。
 今回、茶畑・みかん畑部分の審理打ち切りを強行したように、第六回審理においても山林部分の審理打ち切りを強行してくることが予想される。反対派は、激論のすえ、第六回審理では、茶畑・みかん畑部分の審理打ち切りの抗議、断固として意見陳述をやりぬく、打ち切りを許さないの三点で意志一致した。いずれにしても第六回審理(十月六日、金/東静岡駅下車・グランシップ)は、大きな山場、「決戦」局面に入った。反対派は、このことを深く自覚し、圧倒的結集を確認した。

旅客需要予測
のデッチ上げ

 こんなにも強引に押し進める静岡空港建設は、本当に必要なのか、あらためて問い直す必要がある。ウソとでっち上げの空港計画を上げたらきりがない。とりわけひどいのが、空港計画の前提になった旅客需要予測のでっち上げだ。一九九五年の設置許可申請時は百七十八万人を超えると豪語していたが、露骨な水増しであることを各界から批判され、いまは百六万人と修正した。だが、この修正でさえ、〇五年二月に中部国際空港が開港し、以前と同じレベルで静岡空港の旅客予測が立たないはずだ。また、新幹線品川駅ができ静岡県中部(静岡市)、東部(富士、三島以東)圏から羽田へは九十分で行けるようになった。すでに静岡空港の交通上の価値は全く薄い存在なのだ。
 さらに新幹線空港新駅の可能性について、東海旅客鉄道前会長の須田寛相談役が講演(九月十一日)で「(空港新駅と)掛川駅との距離が非常に短く、新駅をつくれば新幹線の速度メリットがなくなる。すでに県内には熱海―新富士間にダイヤのしこりがある。もう一つしこりをつくるようなことはいくら工夫してもできない」と正直に建設困難だと発言している。すでに県内には新幹線の駅が六つもあり、これ以上増やすと列車づまりとなってしまうからだ。静岡駅からの新幹線ルートが断たれてしまった。だが、県はこの現実を直視することを絶対にしようとしない。なぜなら旅客需要予測をさらに低くしなければならないからだ。つまり、百六万人よりも下方修正することは赤字空港であることを認めてしまうからだ。
 第二の大問題が空港建設によって県財政の破綻状態を促進、拡大することだ。建設費の当初予算は千九百億円だったが、〇四年までに支出されている額は千四百億円で、残りは五百億円ほどしかない。空港反対派の未買収地もあり、これ以上本格工事を進めることができない状況に落ち込んでいる。残り予算五百億円で完成するわけがない。工事着以降、空港本体部と障害切土部分を合わせた地形改変区域の造成工事において膨大な移動土砂量が出ている。これからも膨らみ続けることは確実で大幅な事業費を避けられない。
 結局は、空港建設を優先し、県民生活にとって切実な教育・福祉関係財政を削減しながら、ゼネコンや地元ボスの利益優先のために借金をすべて県民に押しつけようとしているのだ。こんな空港は県財政破綻の元凶物の象徴でしかない。即時建設中止しかないのだ。
 こんなことは、空港はいらない静岡県民の会などの反対派が繰り返し暴露してきたことだ。それだけではない。多くのメディアでさえあまりにずさんで、無駄な空港だとして揶揄し、厳しい批判を続けてきた。それにもかかわらずストップをかけられないのが石川県政・官僚・ゼネコンと地元利権集団たちだ。借金は自らが払わず県民にまわせばいい、痛くも痒くもないというのが本音だろう。
 このような共犯構造が「一丸」となって反対派の土地を奪い取ろうとねらっている。〇六年内にすべての収用対象の土地・物件の審理を結審し、裁決を強行して、〇七年一月〜三月に補償交渉入りする。だが、反対派の拒否によって頓挫に追い込まれるが、これは想定通りで反対派土地の所有権を奪い取る手続きを開始しつつ、暴力的土地強奪態勢に着手するのだ。そのうえで大量の県職員・暴力ガードマン、そして警察権力を待機させ、反対派の土地の強制収用のために襲いかかってくるというシナリオを描いているはずだ。
 そして、〇八年十一月一日に空港工事完成させ、〇九年一月頃に国交省による空港供用調査、三月、開港と手前勝手に描いている。収用委は、石川県知事の忠実な先兵として審議早期終了作戦のもとに打ちきりを強行してきたのだ。
 このようなシナリオを破綻させるために本来地権者の石川県知事、収用委に対する怒りに応えていこう。

本来地権者の
怒りの陳述

 檜林さんは、「この静岡空港建設が発表され、十八年という年月が経ちます。その間、私は一日として穏やかな日を過ごすことはできませんでした。毎日が苦しい日々の連続です。しかし、私の反対という決意は微動だにしません。それは、私たちが主張することが、どこから見ても自然で、正当であると確信しているからです」と長年の怒りを断固として陳述(第四回公開審理)した。
 松本さんは、「当地に決定されてから現在まで、私どもに対して県からさまざまな策略や脅し、そして嫌がらせがありましたが、私は人間らしく生きる、生きたいとの一念でやってきました。これからも人間らしく生きたいと思います」と生存権を主張し、人権無視の空港建設を糾弾した(第四回公開審理)。
 村田さんは、暴力的強制測量調査、地主の通行権妨害に対して抗議した。本来地権者たちの感動的な意見陳述は、まさに闘う原点だ。
 本来地権者、共有地権者、立ち木共有者たちの強制収用阻止の闘いに連帯していこう。共に闘わん!
       (遠山裕樹)  


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