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新しいヨーロッパと新世代               かけはし2006.10.23号

熱気に満ちた豊かな経験を交流

06年第四インターナショナル青年キャンプ
中東問題を若いパレスチナ人と討論

トーマス・アイスラー、ペネロプ・デュガン


550人を超
える参加者

 今年の青年キャンプは、イタリアのウンブリア州ペルージャに近いキャンプ場に五百五十人を超える若い参加者が結集し、一九九五年以降では最大の第四インター青年キャンプとなった。
 これは、二百三十人を派遣したイタリアの「シニストラ・クリティカ」(批判的左翼)の強力な動員のおかげである。フランスからも百三十人の強力な代表団が参加し、スペインから七十人が参加したので、今回のキャンプはラテン系言語が強く支配するキャンプとなった。
 もちろん、楽しい国際主義的雰囲気に包まれ、ベルギー、英国、スコットランド、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、オランダ、ポルトガル、スウェーデン、スイスおよびフィリピンからの小規模代表団もくつろいで過ごすことができた。

フィリピンの同
志が参加・報告

 フィリピンのミンダナオから同志が参加したことで、参加者たちは、米国の支援を受けたフィリピン政府の軍事的占領に対する絶え間ない闘争の生々しい現実を知らされた。ジェイムズ・ネスビットは、「スコティッシュ・ソシアリスト・ボイス」(スコットランド社会党機関紙)のキャンプ報告記事の中で次のように書いた。「私たちはフィリピンの同志たちと話し合って、暗い気持ちになったが、同時に鼓舞された。私たちは、国家による抑圧、武装抵抗運動、毛沢東主義派ゲリラによる同志の虐殺の経験を共有した。」
 また、スコットランドの十二人の若者たちが参加したことは、スコティッシュ・ソシアリスト・ユース(SSY、スコットランド社会主義青年同盟)にとって、SSP(スコットランド社会党)が危機に直面しているにもかかわらず、前進への大きな一歩であった。
 また、ギリシャの参加者もこれまでよりはるかに多かったが、これは地理的に近いことと、OKDE・スパルタコスの青年メンバーが増えたためである。彼らは今回の経験を非常に積極的に評価しており、来年はさらに力を入れてキャンプに動員するだろう。ポルトガル代表団は、この二年間「左翼ブロック」の青年キャンプを優先させたので、動員は後退した。


戦争の影―中
東問題を理解

 戦争の問題は、計画段階の予想を超えて大きな中心テーマとなった。キャンプが行われたのが、イスラエルのレバノン攻撃の最中であったからである。キャンプは、中東問題の理解を強化し、レバノンおよびパレスチナの人民との連帯を強める方法を討論する機会となった。キャンプ中の経験を交換し活動を調整するために「常設ワークショップ」が計画に追加された。計画されていた帝国主義と戦争に対する国際的抵抗に関する中心フォーラムは、ガザにおける連帯活動から直接参加した若いパレスチナ人の同志およびスペインの若い女性の参加によって強化された。
 「新しいヨーロッパの新世代―反資本主義的左翼の建設」。ヨーロッパにおける急進的反資本主義政党の建設の経験は、キャンプの課題のもう一つの中心点であった。そのようなプロジェクトに関与した同志たちの経験の交換が、フォーラムやワークショップの、また代表団間の交流会議の中心テーマとなった。そこで同志たちは顔をつき合わせて、成功や失敗の経験を討論することができた。彼らはすでに、比較的長期にわたる経験、たとえばポルトガルの左翼ブロック、デンマークの赤と緑の連合、スコットランド社会党、イタリアの共産主義再建党(PRC)内の経験を持っているし、ドイツのWASG―左翼党や英国のリスペクト党のような比較的新しい経験もある。

イタリアでは
正念場に突入

 今回の青年キャンプは、第四インターと共産主義再建党内のシニストラ・クリティカ(批判的左翼)の若者にとって重要な機会であった。複数の共産主義再建党反対派議員が、状況を説明する機会を得た。共産主義再建党多数派は、党の以前の立場と矛盾して、イタリア軍のアフガニスタン駐留に賛成することを決定した。多数派は、駐留に影響を与えることで駐留を有害でなくすることを望んだ。「しかし、戦争をして人を殺すことを、どうすれば有害でなくすることができるのか」と、反対派上院議員の一人であるフランコ・トゥリグリアットは叫んだ。
 第四インターナショナル支部の二人の上院議員は、政府を倒してベルルスコーニを政権の座に戻す決定的票を投じることもできた。この投票は信任投票とされていたからである。結局、反対派上院議員はイタリア軍のアフガニスタン駐留継続の動議に賛成投票をした。
 しかし、同時に、十六名の上院議員の支持を得て最後通告を発表し、六カ月後の次回には、もしプロディ政府がアフガニスタン駐留に固執するなら、プロディ政府を守らないことを明らかにした。


フランスの教訓と
ギリシャでの闘い

 キャンプは、種々の国における最近の運動を反映して、熱気に満ちた、豊かな経験の交換の場となった。複数の国で、学生たちが緊縮財政と教育の商品化に反対して立ち上がった。フランスにおいて広範な動員の後にCPE(初期雇用契約)が撤回されたことは、他の国々にとって激励となった。「CPE反対の動員の後、ギリシャで巨大な学生運動が始まった。(……)学生たちは、われわれは勝利するという意味で、われわれは政府に対して『フランス語をしゃべる』と言ったそうである。私たちは種々の動員から学んだ教訓について討論し、ギリシャでは改革の延期が勝ち取られたことを知った」。(フランスの『ルージュ』の報告記事)

21世紀の革
命と新世代

 もう一つの絶えることのない議論の糸は、新世代の政治的活動家が今日のありのままの世界を展望し、世界を変える闘いのために必要な政治的道具を鍛え上げることの必要性であり、それを過去の経験から学ぶことを忘れることなく行うことである。キャンプは、二十一世紀の革命的闘争を推し進める新世代を形成する重要な機会である。

キャンプに参加して


「多くを学び、
楽しんだ」

 第四インターナショナルは、LGBT(レスビアン・ゲイ・バイセクシュアル、トランスジェンダー)解放、国際主義、女性の解放、マルクス主義的エコロジーのような階級的問題の重要な性格を認識するために努力しているようだ。特に、SSPでは明らかに論議を引き起こすような、フェミニズムへの関与をためらわない。われわれの代表団は、多くを学び、楽しみ、多くの重要な新しい出会いを経験し、満足して帰国した。第四インターは唯一の国際的極左派というわけではないが、SSYは参加したことを喜んでおり、主催者および各代表団に対して、その友好、歓迎、連帯に感謝するものである。私は若いメンバー諸君に対し、来年のキャンプに参加し、第四インターとその歴史および現在の姿についてさらに知ることを勧める。
(「スコティッシュ・ソシアリスト・ボイス」)

「ミニ・ドリー
ム・ワールド」

 キャンプの経験は、参加した者に深い影響を与えた。ロンドンから参加したタミール・ナスララーは、「キャンプは、ミニ・ドリーム・ワールドのようだった。それは若者が自己を政治的に表現する場であり、資本主義制度の障壁を超えて物事を高度に批判的な仕方で問い直すことを可能にした」と語っている。
 キャンプは若者によって運営されており、社会主義的構造についての知識と確信を浸透させることができる。「第四インターナショナル青年キャンプは、ユートピア社会の見本であり、社会主義的市民社会の小宇宙を作り出している。そこでは、階級闘争が克服され、ジェンダーが問題にならず、平等が絶対である」とジェイミー・スミス(シェフィールド、サウスバンク大学)はコメントしている。
(「ソシアリスト・レジスタンス」、イングランドおよびウェールズ)

異なる世代を
つなぐ赤い糸

 フランスの哲学者ダニエル・ベンサイドのような歴史的闘士が、若い世代のグループと膝をまじえて意見を交換し、新たな反抗的青年たちの体温を測り、「六十八年世代」としての彼の身にしみついた戦いの経験を思い出しているに違いないその姿を見ることは、興味深かった。
 マスメディアは、人は二十歳のときは急進的左翼で、四十歳では不可避的に右翼になるという不可逆的論理を信じ込ませたがっているが、あの時代の反乱学生のすべてが体制に統合されたわけではない。(……)キャンプにおける教育と非公式の会話は、闘士の経験の欠くことのできない伝達の場である。それらは、異なる世代をつなぐ赤い糸を固く結びつける。
(「エスパシオ・アルテルナティボ」、スペイン)
▼トーマス・アイスラーは、「赤と緑の連合」全国指導部およびSAP(第四インターナショナル・デンマーク支部)指導部のメンバーである。
▼ペネロープ・デュガンは、第四インターナショナル執行ビューローのメンバーである。



投書
「革命的」という部分をどう考えるか

                                   K・S

 JRCLのご活躍に敬意を表します。二十回大会の平井提案、興味深く読みました。
 「大会での討論を通して明らかになったのは、…『反資本主義左翼』をどのようにイメージするのか、新しい複数主義的民主的全国組織をどう考えるのか実践するにあたってわが同盟内には未だ大きな政治的幅があること」とあります。真剣な討論がなされていることと思います。
 ただ、気になったのは革命派としてのアイデンティティーはどう位置づいているのか、という点です。十五回世界大会は、「大衆的影響力をもった新しい国際主義的、複数主義的、革命的、戦闘的勢力の構築の展望によって、世界的規模での労働運動および社会的運動の広範な再組織化に寄与すること」と決議されていました。意図的ではないと思いますが、「革命的」という部分が抜け落ちているように感じました。新しい階級闘争のサイクルの始まりの中で、改良主義的部分に抗して、どうやって革命的潮流のヘゲモニーと組織を再構築するか、という問題意識が、十五回世界大会の華であると思っています。
 「社会主義をめざす階級闘争の歴史的サイクルの消滅に代わる反資本主義的オルタナティブの主体的萌芽」(平井提案)という言い回しは改良主義的にも読めます。「再組織化の新しい政治サイクルは、はじめから、大衆的、革命的、反資本主義的、反帝国主義的なインターナショナルの問題を提起している」(15回世界大会)のではないでしょうか?
 確かに日本の左翼運動は、ラテンアメリカやヨーロッパとは違い、「地獄への下り坂」を未だ脱してはいません。そうであっても、JRCLが、革命派総体にインパクトのある組織方針を採られることを期待します。

K・Sさんに答えて
「革命的」の今日的意味
               平井純一


 K・Sさん。「かけはし」を熟読し、貴重なご意見を寄せていただきありがとうございます。JRCL二十回大会に提出した平井文書について「改良主義的に読める」という危惧についての私の意見を簡単に述べます。
 K・Sさんも書いているように、日本の左翼運動は「地獄への下り坂」をいまだ脱することはできていません。それは、自民・民主のブルジョア二大政党制が事実上形成され、新自由主義への抵抗が「格差社会」批判という形で始まっているとはいえ、その対案が多くの場合「欧州モデル」の「社会的規制」を加えた「よりまし資本主義」という形でしか表現されていない点に示されています。言うまでもなく、この「よりまし資本主義」という「市場原理主義」への「オルタナティブ」は、公共サービスの市場化・民営化、雇用の非正規化による権利の剥奪など新自由主義の枠組みを維持したまま、それにごくわずかな形だけの「規制」を加えるだけのものです。こうした「社会自由主義」の実践は、欧州社民党の「実績」によって明らかです。それはブッシュ政権の「対テロ」戦争の論理と正面から対決できないことにも表現されています。
 私たちは、この日本の現実の中で、「新自由主義」に対する批判と抵抗の開始の当初の段階から、「社会自由主義」に対する反資本主義的オルタナティブを提示するよう意識する必要があると考えています。
 もちろん、小泉・安倍政権の新自由主義的「構造改革」の論理やブッシュ戦略と一体化した「戦争国家」体制の構築=改憲の攻撃に対しては、共産党、社民党、非政党的市民運動の共同した戦線が不可欠であり、私たちもその共同戦線の拡大のために誠実に闘っていくことが求められています。その中で、同時に反資本主義的な「抵抗のオルタナティブ」を体現する政治的極を築き上げていくことが求められていることを私たちはつねに意識しています。
 ロシア革命に始まる「社会主義をめざす階級闘争の歴史的サイクルの消滅」は、所与の現実であると私たちは考えています。しかし、それは「社会主義をめざす階級闘争」を私たちが放棄したことを意味しません。むしろグローバル資本主義の戦争と強搾取の論理は、階級闘争の新しいレベルでの復権を要請しています。この間の闘いの中で私たちがつかみとらなければならない「反資本主義的オルタナティブ」の萌芽は、まさに「資本主義の廃絶、社会主義をめざす階級闘争」のダイナミズムをどのように新しいレベルで再建していくかを突きつけているのだろうと考えています。
 スターリニズムと社会民主主義の犯罪的実践が作りだした「革命と社会主義の信頼性の喪失」は、とりわけ日本においては深いものです。この危機を現実の闘いの中から克服し、最も平等で自治的で民主主義的でなければならない社会主義を実現するための相対的に長期にわたる闘いを継続すること――私たちはここにおいて「革命的」であることを肝に銘じたいと願っています。
 K・Sさん。これからもご意見をよろしく。ともに討論し、闘っていきましょう。


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