もどる

                           かけはし2006.10.16号

国体にレッドカードを

「復興なった兵庫」というデマゴギーを許さない!


 【兵庫】九月三十日から、「震災からの復興感謝のため」と銘打って、麗々しく兵庫国体が始まった。近年、国体に対しては、左翼の側からする「天皇を賛美し、天皇を中心にして国民の統合を図ろうとするための一大イベント」という批判だけではなく、ゼネコンを喜ばせるだけの巨大な箱物建設による税金の無駄使いや、必ず主催県が天皇杯を獲得することに象徴される空疎な内容等に対して、廃止論も含めた批判が起きている。
 そうした批判や、国体簡素化の流れにもかかわらず、井戸兵庫県知事は、天皇杯、皇后杯獲得を至上命令として、震災被災者の支援要請を一方では無視しながら、国体準備のためには巨額の税金を投じてきた。
 九月二十九日午後七時、神戸学生青年センターで開催された「兵庫国体反対前夜集会」で、神戸の報告者たちが等しく強調したのは、「復興感謝国体とは、被災者への支援策の打ち切り宣言に他ならない」ということであった。
 基調報告に立った、もういらん国体!兵庫連絡会の代表は、被災者の置かれたきびしい現実の一方で、国体のための予算は今年度だけで五十億円が計上され、関連施設の整備費用は総計で千億円近くに上っていると報告した。
 また、県当局は「県民あげて全国に感謝の気持ちを表す、県民総参加国体」と称して、大量にボランティアを公募、強制的に動員される中・高・大学生を含めると「県民総動員体制」の実演とも言うべき体制がとられていること、「人殺し」の訓練として自衛隊しかやらない銃剣道競技の開催を追及する行動を行ってきたこともあわせて報告した。

皇后の歌碑は「復
興」讃美の道具

 「神戸市による美智子皇后の歌碑建立を考える会」からは、国体開催とあわせて皇后美智子の歌碑が神戸市によって建設されたことの問題点と、闘いの経過が報告された。
 建立委員会の事務局が市企画調整局調整課に置かれ、賛助金の振込先が調整課長の名義であり、建設する場所が市所有の公園である東遊園地であるにも関わらず、市当局は建立委員会は私的な団体であり、市は直接は関係ないとして、「考える会」の情報公開要求に対して一切答えてこなかった。神戸を歌った美智子の歌は「笑み交わし〜復興なりし〜」という言葉で彩られており、国体を口実に「復興実現」をキャンペーンしたい兵庫県と神戸市にとっては、絶好の材料だったのだ。
 ここ数年、神戸市には、神戸市における強制連行の記録の石碑を同東遊園地に、非核神戸方式の記念碑をメリケンパークに建設したいという請願がなされてきたが、いずれも許可は下りてはいない。この問題は、権力者にとっての天皇制の効用をいみじくも表しているのだろう。

被災者はいま
も闘い続ける

 次に立った兵庫県被災者連絡会の河村宗次郎代表は「この街は復興はなったのか」と鋭く問いかけ、国体に巨額の税金を費やしながら、被災者のささやかな要求にすぎない復興住宅の特例家賃を廃止しようとしている行政当局を激しく糾弾した。
 神戸の最後の報告者、「神戸の冬を支える会」の柴田信也牧師は、国体に向けて野宿者の強制排除はなかったが、これは昨秋の神戸空港の開港以来執拗に続けられてきた、半強制的ともいえる説得活動の結果であり、今後も監視活動を続けていくと決意を述べた。
 翌三十日、JR三宮駅前でのビラまきに引き続いて、午後一時から神戸市東遊園地で「のじぎく兵庫国体反対集会」が六十人の参加で行われた。集会では前日に引き続いて、神戸からの報告、関東から九州に至る全国からの参加者のアピールがなされた。その中で、被災者連絡会の河村さんの発言が印象的だった。
 河村さんは公園をとりまく高層ビル群を指さすと、「ある意味で復興はなされたのかもしれない。しかし、その陰で未だに苦しんでいる被災者がたくさんいる」と訴えかけた。そして、その苦しんでいる被災者を「家賃を払える者と払えない者とに巧妙に分断するのが、特例家賃廃止のもう一つのねらいなのだ」と指摘し、秋に向け断固として戦い続けることを高らかに宣言した。
 集会の後、参加者は数倍する私服警官を引き連れて、国体歓迎ムードを演出する三宮の商店街を、「国体反対!被災者切り捨てを許すな!」のシュプレイコールをあげてデモ行進を行った。
 なお、集会を行った東遊園地には皇后美智子の歌碑がある。非公開だったとはいえ数日前には除幕式も行っていたのだが、国体開幕式のこの日、歌碑にはブルーシートがかけられていた。       (O)


JCO臨界事故7周年集会
幕引きに向かおうとする原子力開発機構と経産省


その後も頻発
する原発事故

 九月三十日、日本初の臨界事故となった茨城県東海村のJCO事故から七年。二人の作業員(大内さん、横川さん)の命を奪った事故の後にも、五人が亡くなった一昨年八月の美浜3号機事故など、原発事故は後を絶たない。しかし原子力開発機構(旧動力炉燃料開発事業団)、経産省などは、自らの責任を完全に頬かぶりし、幕引きに進もうとしている。
 この日、東海村臨界事故7周年東京圏行動実行委員会は、午前十時から四十八人の参加で経産省前で死者への「追悼行動」を行った後、午後六時半から文京区民センターで講演集会を開催した。集会には百七十五人が参加した。
 主催者を代表してたんぽぽ舎の柳田真さんが基調報告。柳田さんは「七百人の被曝はあったが健康被害は二人の死者以外なかった」とする被害者を切り捨てる政府報告書を糾弾し、国の責任を問い、補償を求める住民被曝者原告大泉恵子さん、昭一さんの裁判闘争の支援、もんじゅ西村裁判支援などの取り組みを強めることを訴えた。大泉昭一さんが会長をつとめる「臨界事故被害者の会」が入手した茨城県の「周辺住民等の事故直後の問診結果」によれば、回答総数千八百三十八人のうち何らかの症状を訴えた人びとは三百七十一人(頭痛八十七人、下痢五十七人、風邪五十三人、咽頭痛四十八人など)に上っており、広島・長崎の被爆者の急性傷害と同じパターンとなっているのだ。
 続いて、望月彰さんが「臨界事故の原因と責任」と題して報告した。望月さんは、JCO事故の直接の責任が、動燃の「四十リットル混合均一化注文」(4リットル容器十個の濃度が均一となるように四十リットルを混合して容器十個に分配しておく)という要求に応じて、作業者がバケツ一杯6・5リットルの硝酸ウラニル溶液(ウラン2・4キログラム)を沈殿槽に注ぎ、七杯目で臨界に達したためである、と指摘。作業者である篠原さんと大内さんの死は、動燃側の注文に責任があると強調した。

住民被曝者・
大泉夫妻の訴え

 次に住民被曝者原告である大泉恵子さんと昭一さんが登壇して「臨界事故で被曝して」と題する報告を行った。大泉さん夫妻はJCO事故の現場から百二十メートルという直近で被曝した。事故後、被曝を原因とする頭痛、下痢、PTSDなどの症状に苦しんできた大泉恵子さんは、集会の場で発言するのは初めてである。
 「私はこの七年間、精神安定剤や睡眠剤など六種類の薬を飲みつづけている。主人(昭一さん)は、十三種類の薬を飲み、皮膚につける薬を入れると二十種類もの薬を使用している。国とはいったい何でしょうか。安倍首相は『美しい国』と言っているが、安倍さんは原子力の問題をどう扱おうとしているのでしょうか。最近、国の政策によって棄民とさせられたドミニカ移民の話を聞いた。国民をだましたことの責任を誰がとるのかが明らかになっていない」。
 こう切り出した大泉恵子さんは、精神的に圧迫され、のたうちまわり、「自殺願望」にまでいたったこの七年間の経験を静かな口調でたんたんと語った。昭一さんは「東海村はひっそりとしている。しかし私たちは事故を風化させたくない」と裁判闘争を闘う決意を語った。大泉裁判闘争への支援を呼びかける会場カンパには八万五千円が寄せられ、大泉さんに渡された。
 槌田敦さん(高千穂大学講師)は、「今、日本の原子力はどうなっているか――多発する事故と核武装化の危険」と題して講演した。槌田さんは、日本の核武装を「合憲」とする安倍の主張と重ね合わせながら、「もんじゅ」「常陽」の高速増殖炉の目的の一つは、核兵器製造のためのプルトニウム増殖にあると主張した。
 最後に、もんじゅ西村裁判(「自殺」とされた西村成生さん〔当時、動燃総務部次長〕の不審死の責任を問う損賠訴訟)原告の西村トシ子さん、劣化ウラン禁止・市民ネットワーク、浜岡原発止めよう・関東ネットがアピールを行った。
(K)          

【訂正】本紙前々号(10月2日号)1面論文1段6行目「計四〇二」を「計四六四」に、同4面「国情研雇い止め裁判」記事6段左から18〜19行目「次回、第三回控訴審は十月十八日(水)午前十時から」を「午後一時十五分、八一八号法廷」に訂正します。


新しい反安保実が集会
イラク・レバノン戦争と国連・自衛隊を問う


「反テロ戦争」
への全面批判を

 九月二十九日、新しい反安保行動をつくる実行委員会第10期(反安保実X)は「イラク・レバノン戦争と国連・自衛隊を問う!9・29集会」を、東京・文京区民センターで行った。安倍新首相はこの日、施政方針演説で「テロとの闘いにおける国際協力」を口実にしたイラクへの自衛隊派兵を「歴史に残る偉業」と礼賛し、「日米同盟がより効果的に機能し、平和が維持されるようにするために、いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に該当するのか、個別具体的な例に即し、よく研究してまいります」と、事実上の「集団的自衛権」行使に踏み込む方針を打ち出した。
 まさに、「テロとの闘い」「国際協力」を掲げて、自衛隊が米軍の指揮の下で侵略軍として実戦に参加する時代の反戦・反安保の闘いをどう作り上げるか問われる時代に入ったのである。天野恵一さんが主催者あいさつを行った後、三人から報告を受けた。
 武者小路公秀さん(国際政治学)は、「イラク・レバノン戦争と国連・アメリカ」と題して次のように語った。
 「GPPAC(武力紛争予防のためのグローバル・パートナーシップ)のアジア諸国のグループは、九月十一日に発した宣言で『われわれの敵はテロそのものではなく、反テロ戦争それ自体である』と語っている。これまでの日本の態度は『反テロ戦争』の中の戦争ではない部分に参加する、というものだった。しかしこれからは違う。『反テロ戦争』に戦争とそうでない部分があるというのは間違いだ。アメリカの戦略の中での『反テロ戦争』には戦場と銃後という区別はない。私がいましゃべっているこの場が、実は『テロ』を謀議する戦場ということになりかねない」。
 「『反テロ戦争』には、殺し、国を破壊し、そして再建するという一つのサイクルがある。アフガンでそれが始まり、イラクに移り、そしてレバノン、イラン、北朝鮮へと波及しようとしている。『再建』も戦争の一部であり、このサイクルには軍需産業から土木・建設産業が深くかかわっている。こわして儲け、再建して儲けるのだ」。
 「部分的に『反テロ戦争』に反対するというのではダメだ。それは部分的協力を意味する。米軍の戦略の基本は先制攻撃にあり、世界中が戦場である。国連の中には『反テロ戦争』に協力しながら、それを抑制しようとする人びともいる。人権委員会がそうだった。しかし人権委員会が人権理事会となるという動きを米国は支持した。悪者を人権委員会が認定し、安保理が戦争を決め、そして平和構築委員会が『再建』の枠組みを作るという構想だ。平和構築委員会の中には企業も入ることになる」。
 「今や、『反テロ戦争』に全面的に反対する必要がある。南米諸国の中にそうした動きが形成されている。『人間の安全保障』を支持している日本はこの米国の『反テロ戦争』を『人間の安全保障』に反するものとして批判しなければならない」。

イスラエル軍と
劣化ウラン兵器

 次に劣化ウラン研究会の山崎久隆さんが、パソコンで画像を映し出しながら「劣化ウラン弾――イラクとレバノン」と題して報告。山崎さんは今回のレバノン侵略においてイスラエル軍が劣化ウランを弾頭に使ったバンカーバスターや、120ミリ戦車砲から発射される劣化ウラン弾を使用したことを報告し、さらに百万発ものクラスター爆弾を使用して意図的に人員殺傷を続け、復興を遅らせる妨害活動をしていることを糾弾した。
 岡田剛士さん(派兵チェック編集委員会)は、今回のレバノン侵略戦争が、軍暦のないオルメルト首相やペレツ国防相が、軍の制服組からの要求に引きずられた結果であると説明し、停戦を取り決めた国連決議1701が先制攻撃で一方的な破壊と殺りくを行ったイスラエルの責任をまったく問わない、いちじるしく偏ったものである、と批判した。
 討論の中では、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)に自衛隊が参加する要請がなされていることにも注意が喚起された。
 最後に、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、たんぽぽ舎、ミーダーン(パレスチナ:対話の広場)、06核とミサイル防衛にNO!キャンペーンから呼びかけが発せられた。   (K) 


もどる

Back