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                           かけはし2004.02.16号

「人道復興支援はデタラメだ」

自衛隊はイラクからただちに撤退せよ


 米英のイラク侵略戦争の不法性は、もはやいかなる情報操作によっても否定できないことが明らかになった。イラク「大量破壊兵器」査察団のリーダーだったケイ元米CIA顧問が、「大量破壊兵器」は存在しなかったことを明らかにし、極右・ネオコン一派のラムズフェルド米国防長官さえもが二月四日の上院軍事委員会の公聴会で、かつて「大量破壊兵器の存在場所を知っている」と明言したことは「誤りだったかもしれない」と述べた。パウエル国務長官は二月三日付「ワシントンポスト」紙とのインタビューで、「イラクに大量破壊兵器がないと知らされていた場合でも軍事侵攻を支持したか」という質問に対して、「わからない」と動揺している。ブッシュ、ブレア両政権は対イラク開戦の「大義名分」とされた「大量破壊兵器の脅威」について独自の「調査委員会」設置にまで追い込まれている。
 しかし小泉首相は、あくまでも「大量破壊兵器が将来見つかる可能性もある」との言い逃れに終始し、「特別委員会」を設置して首相が「大量破壊兵器がある」と判断した根拠を調査すべき、という要求に対しても「日本には調査能力はない」と拒否した。石破防衛庁長官は「戦争支持の問題と復興支援の話は別」と、「大量破壊兵器」でっち上げ問題についての追及をかわし、自衛隊イラク派兵を「人道的支援」の文脈にすりかえている。
 国会論議の中で、「サマワの治安は安定」とした陸自先遣隊の「調査報告」が外務省と防衛庁による事前の作文であることが明らかになった。自衛隊が米英を中心とした占領軍の一部であって、「第七連合統合任務軍(CJTF7=イラク占領軍)の指揮下に入る」ことも、共産党からの質問に対する当のイラク占領軍の回答によって明らかになった。
 そして、この自衛隊の占領軍への組み込みは、一九八〇年の政府答弁書によっても「相手国領土の占領、占領行政への参加」という憲法が禁じる「交戦権」の行使に含まれ、明白な違憲行為なのである。それでも小泉首相は、具体的証拠を突きつけられても「自衛隊は政府の指揮の下で活動する」と、なんの根拠もない強弁を繰り返したのであった。
 二月三日に新千歳空港を飛び立った陸自本隊の先発隊は、重機関銃を装備した装輪装甲車、軽装甲機動車を中心にした二十五台の車列をつらねて二月八日にサマワに入った。翌二月九日夜、参議院本会議は自衛隊イラク派兵承認案を与党の賛成で可決した。
 二月下旬から三月にかけて、陸自主力部隊が続々とイラク現地に向かおうとしている。ついに自衛隊が侵略戦争と植民地的軍事占領を遂行するという歴史を画する事態に対して、小泉内閣は「自衛隊は戦争に行くのではない。イラクの人びとのための人道復興支援に日本を代表して行くのだ」とシラを切るばかりだ。そしてマスコミもまた「人道復興支援のためにイラクに派遣される自衛隊」という決まり文句で政府の主張を追認している。
 二月一日、旭川市で行われた「隊旗授与式」で小泉首相は「(イラク派兵に)反対する国民の中にも、心の中では諸君の運動に声援を送る人がたくさんいると信じている。口に出さなくても、敬意と感謝の念を持って送り出そうとする国民はたくさんいる」と「挙国一致」ムードをあおりたてた。地元の旭川商工会議所が企画した「派遣隊員の無事を祈る黄色いハンカチ」運動が広がり、駐屯地や旭川市内のいたるところに掲げられた。
 「戦争や派兵の是非はともかく、自衛隊員の無事を祈る」という「黄色いハンカチ」は、まさに「武運長久」を祈る戦時国民動員の典型である。「自衛隊員の無事を」という情緒的気分の高揚と「人道復興支援」というスローガンは、戦闘での自衛隊員の死者が出た際には「遺志を引き継ぐためにひるんではならない」というキャンペーンの基盤に転化する。「日の丸」を背負い、「日本を代表して危険を省みず任地に赴く」自衛隊員への「無事」を祈り、「感謝」の気持ちを浸透させるうねりは、いま着実に広がりつつある。
 そしてそこでは、日常的に拡大するイラク民衆の反軍政闘争の中で「テロとの闘い」や「治安維持」を名目にした占領軍の攻撃で、多くのイラクの民衆が虐殺されている現実(イラク・ボディカウントが二月七日に発表した数字によれば、その数は最大見つもりで昨年いっぱいで一万人を超えた)は覆い隠されてしまい、その占領軍に自衛隊が参加しているという事実も消し去られてしまうのである。自衛隊の活動に対する厳重な報道規制と、マスメディア自身による「主体的」な「イラク復興のために身を粉にして働く自衛隊」といった翼賛報道は、この戦争の本質、イラク侵略軍としての自衛隊の本質を隠蔽してしまう。
 われわれは今こそ「人道復興支援」のウソを多くの人びとに訴え、この不正きわまる戦争と占領の実態をあばきだすことを通じて、「自衛隊はイラクに行くな! イラクから撤退せよ! 全占領軍のイラクからの撤退を!」の声を広げていかなければならない。
 民主主義・人権・平和を求めるイラク民衆の反占領闘争と連帯し、全世界の人びととともに三・二〇日比谷大集会を、昨年二、三月のイラク反戦闘争をを上回る規模でかちとろう。
 ブッシュ、ブレア、小泉の戦争を止めよう! 帝国主義のグローバル戦争の前線に登場した自衛隊を大衆的な反戦運動で包囲しよう。
(2月10日 純)

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