世界の社会運動団体のよびかけ かけはし2003.2.10号より |
新自由主義的グローバリゼーションと
闘う社会運動の世界的ネットワークを |
すべてのネットワーク、大衆運動・社会運動団体にこの声明への署名を呼びかける |
2003年1月、ブラジル、ポルトアレグレにて
この呼びかけ文は、ブラジル・ポルトアレグレ市で開催された第三回世界社会フォーラムに世界中から集まった多くのネットワーク、大衆運動団体、社会運動団体の約七百人が五日間かけて討論した後に作成されました。この呼びかけ文には、私たちを取り巻く状況や問題点の分析、そしてそれに対する提案、さらにその提案を実現するための具体的な行動が盛り込まれ、世界の社会運動ネットワークの確立が呼びかけられています。そして、各団体にこの呼びかけ文への署名が要請されています。賛同される団体は三月末までに、直接 movsoc@uol.com.br にメールで連絡するか、またはATTAC Japan(attac-j@jca.apc.org)までご連絡ください。
私たちは、グローバルな危機の気配の中、ポルトアレグレに集まった。米国政府が対イラク戦争開始の決意を通じて示している好戦的な狙いは、私たちすべてに重大な脅威を与えており、また、ミリタリズムと経済支配の結び付きを見事に物語っている。
同時に、新自由主義の下のグローバリゼーションは、それ自身が危機に入っている。世界的不況の脅威はかつてなく明白である。企業の不正をめぐるスキャンダルが毎日のように報じられ、資本主義の現実を暴露している。社会的・経済的不平等が拡大しており、私たちの社会と文化、私たちの権利、私たちの生命の社会的基盤を脅かしている。生物多様性、空気、水、森、土、海は商品のように消費され、売り物にされている。このすべてが、私たちの共同の未来を脅かしている。
私たちはこれに反対する!
私たちの共同の未来のために
私たちは、新自由主義の下のグローバリゼーション、戦争、レイシズム、カースト制、貧困、家父長制、すべての形態の経済的、民族的、社会的、文化的、性的、ジェンダー的差別と排除に反対して全世界で闘っている社会運動団体である。私たちは皆、社会的公正、市民権、参加型民主主義、普遍的権利、そして人々が自分たちの未来を決定する権利のために闘っている。
私たちは、平和と国際的協力を目指し、人々の食、住、健康、教育、情報、水、エネルギー、公共交通、人権へのニーズに対応した持続可能な社会を目指す。
私たちは、社会的暴力や家父長制の暴力と闘っている女性たちと連帯している。私たちは農民、労働者、都市の大衆運動、そして住居、雇用、土地、権利を奪われることによって差し迫った脅威に直面している全ての人々の闘争を支持する。
私たちは数百万人という規模で声を上げ、「もう一つの世界は可能だ」と叫んだ。
このことが今ほど真実で、緊急の問題となったときはない。
戦争をやめろ!
社会運動団体は軍事化、軍事基地の拡大と国家による弾圧の強化――それは無数の難民を発生させ、社会運動や貧しい人々を犯罪者扱いする――に反対する。私たちはイラクに対する戦争、パレスチナ人、チェチェン人、クルド人に対する攻撃、アフガニスタン、コロンビアに対する戦争やアフリカにおける戦争、そして朝鮮半島の戦争の脅威の増大に反対する。私たちはベネズエラに対する経済的・政治的侵略、キューバやその他の国に対する政治的・経済的封鎖に反対する。私たちは、新自由主義のモデルを押し付け、全世界の人々の主権と平和を侵害するために計画されたあらゆる軍事的・経済的行為に反対する。
戦争は、世界支配の構造的で永続的な一要素となっており、軍事力を使って人々と、石油のような戦略的資源を支配することを目指している。米国政府とその同盟国は戦争を紛争解決のための、ますます普遍的な解決策として押し付けようとしている。私たちはまた、帝国主義諸国が世界中で宗教的、民族的、人種的、部族的、その他の緊張と反目を助長し、それによって自分たちの利己的な利益を追求しようとする試みを非難する。
世界の世論の多数は、差し迫った対イラク戦争に反対している。私たちはすべての社会運動(団体)と進歩的勢力に対して、二〇〇三年二月十五日に全世界で行われる抗議行動を支持し、参加し、組織することを呼びかける。この行動はすでに世界の三十以上の主要都市で、戦争に反対するすべての人々の協力によって計画され、コーディネート[連絡調整]が行われている。
WTOを失敗させよう!
WTO(世界貿易機構)、FTAA(米州自由貿易圏)や、急増している地域規模あるいは二国間の通商協定――AGOA(アフリカの成長と機会に関する法律)、中米自由貿易協定構想など――は、多国籍企業が自分たちの利益を増進させ、世界各地の経済を支配し、私たちの社会を貧困化させるような開発モデルを押し付けるために利用している。貿易自由化の名において、生命と自然のすべての側面が売り物にされ、人々は基本的な権利を否定されている。農業関連多国籍企業は遺伝子組み替え作物(GMO)を全世界に押し付けようとしている。アフリカや他の地域でHIV/AIDSや他の伝染病に苦しんでいる人々は、低価格のジェネリック薬(特許権で保護されていない一般薬)へのアクセスを拒否されている。さらに、南の国々は、終わりのない債務サイクルに陥っており、そのために市場を開放し、富を輸出することを強制されている。
これからの一年に、WTO、FTAAや貿易自由化に対する私たちのキャンペーンは規模においても広がりにおいても発展するだろう。私たちは農業、水、エネルギー、公共サービス、投資の自由化をストップし、逆転させるために、そして人々が自分たちの社会、資源、文化と知識、経済に対する主権を再確立するためにキャンペーンを行う。
私たちは「もうたくさんだ」と叫んでいるメキシコの農民たちに連帯し、彼ら/彼女らの闘争の精神で、WTOとFTAAを失敗させるために地域で、全国的に、そして国際的に運動を組織する。私たちは食料主権を求め、新自由主義的な農業、食糧生産、流通のモデルに反対する世界的な運動を支持する。特に、私たちは今年九月にメキシコ・カンクンで開かれるWTO第五回閣僚会議と、十月に米国・マイアミで開かれるFTAA閣僚会議の期間、全世界で大衆的な抗議運動を組織する。
債務の帳消しを!
第三世界の債務の完全かつ無条件の帳消しは、最低限の基本的な人権を実現するためにさえ不可欠の条件である。私たちは、債務に苦しむ国が対外債務の支払いを停止し、IMFとの契約、とりわけ構造調整計画を破棄しようとするなら、それを支持するべきである。数世紀にわたる第三世界の人々やその資源、環境に対する収奪を考えれば、この人々は賠償の権利を有している。私たちは「誰が誰に借りがあるのか」を問う。これらの問題は、今年のG8(6月、フランス・エビアン)、WTO(9月、カンクン)、そしてIMF/世界銀行年次総会(9月、ワシントン)に向けて行われる主要なキャンペーンで取り上げられるだろう。
G8に反対する
私たちは、すべての社会運動団体および進歩的勢力に対して、六月一〜三日にフランス・エビアンで開催されるG8が正当な権限を持っていないことを明らかにし、そこで提案される政策を拒否するための大衆動員に参加することを呼びかける。この動員は、エビアンでの国際的集まりと連携して全世界で組織され、エビアンでは対抗サミット、対抗キャンプ、そして巨大な国際的デモが行われるだろう。
女性:平等の促進
私たちは、三月八日の国際女性デーに女性運動団体によって呼びかけられている、あらゆる形態の暴力と家父長制に反対し、社会的・政治的平等を目指す行動に参加する。
連帯して
私たちは、全世界の進歩的社会勢力、運動団体、組織に対して、パレスチナ、ベネズエラ、ボリビア、その他の、現瞬間に極度の危機に立ち向かっている人々への連帯を呼びかける。
[すべての]人々に呼びかける
私たちは現実への関与、さまざまな闘争や国際会議を通じてもう一つの世界を築き始めており、もう一つの世界が可能であることを強く確信している。私たちは戦争や貧困に反対し、平和と社会的公正を求めるために私たちの統一を継続し、強化することを決意した。
私たちの国際的ネットワークの強化を
昨年のポルトアレグレの世界社会フォーラムで、私たちは私たちの目的、闘争、そして連合を作り上げる方法を明確にした宣言を採択した。この宣言の精神は依然として生命を保っており、私たちのこれからの運動を鼓吹するだろう。
その後、世界は非常に急激に変化してきた。そして私たちは、私たちの意志決定プロセス、コーディネート[連絡調整]とアライアンス[連合]の構築において、新しいステップを踏み出す必要を感じている。つまり、広範で、ラディカルで、民主主義、複数制、国際主義、フェミニスト、反差別、反帝国主義の観点に立ったアジェンダ[提案/課題]を提起し、広めていく必要がある。
私たちは、私たちの分析と運動方針を明確にするための枠組みを確立しようとしている。このためには、すべての運動団体の能動的な参加が必要であり、その際に、社会フォーラムが政府や政党から独立していること(これは世界社会フォーラムの「基本原則憲章」(Charter
of Principles)に規定されている)を念頭におき、また、その[参加している各社会運動団体の]自立性を尊重する必要がある。この枠組みは、さまざまな異なる社会的主体が自分たちの経験を報告し、共有することによって強化されていくだろう。しかも、これは社会運動の政治的表現と組織化のさままな形態に沿って、また、イデオロギーと文化の多様性に沿って行われるだろう。
私たちは、敏速で柔軟で持続的で、しかも広範で透明な社会運動のネットワークを確立する必要を感じている。このネットワークの役割は、[社会運動の]プロセスを豊富化し、エネルギーを供給し、その多様性を発展させ、必要なレベルの調整[コーディネート]を引き受けることである。このネットワークの目的は、全世界の運動団体の、より深い政治論争への関与を促進し、共同の行動を推進し、社会的権利のために闘う具体的な主体のイニシアチブを強化することである。その機能は水平的で、かつ効果的でなければならない。
この目的のために、私たちは国際的な動員の情報源と手段を提供するコンタクト・グループ(「世話人グループ」)を確立することを提案する。このグループの役割には、ウェブサイトやメーリングリストを通じた会議の準備、論争と[内部]民主主義の促進が含まれる。このコンタクト・グループは六〜十二カ月にわたって確立される。これはブラジルをベースとする社会運動・大衆運動団体のネットワークの支持者たちの過去の経験を土台とする。
この体制は暫定的であり、継続性を保証するためのものである。この暫定的なグループの主な作業は、世界の社会運動団体が相互に協力するための具体的な手続きを明確化するための論争を準備することである。これは継続的なプロセスである。コンタクト・グループによる最初の検討は、今年九月のカンクンにおけるWTO反対の大衆動員の期間中に行われる社会運動団体のネットワークの会議で行われる。二回目の検討は、二〇〇四年にインドで開催される予定の世界社会フォームの期間中に、社会運動団体のネットワークの会議で行われる。
検討では、特に、コーディネート[連絡調整]の有効性が検討され、それを強化するための新しい方法が追求される。また、その年から次の年へどのように進むのか、国内的・地域的運動や課題別のキャンペーンをどのように組み込むのかが検討される。当面は、より永続的で、構成団体をよりよく反映した構造を確立するための提案を明確にするために、私たちは組織、キャンペーン、ネットワークの間での本格的な論争を必要としている。
これからの数カ月間、私たちはキャンペーンや動員を通じて、このプロセスを試し、改善し、確立するための多くの機会を手にする。
私たちはすべてのネットワーク、大衆運動団体と社会運動団体に、二カ月以内にこの声明に署名して、movsoc@uol.com.br
へ送付するよう呼びかける。
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