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決議                        かけはし2002.3.11号より

米軍部隊のフィリピンへの派遣に反対する!

第四インターナショナル国際執行委員会


(1)フィリピン・ミンダナオにおける紛争状況の解決に向けたアロヨ大統領の全面的な和平宣言は、アメリカが支援する全面的な軍事的解決方針に転換した。二〇〇二年一月に、アロヨ政権はミンダナオのバシラン州に六百六十人の米軍部隊を配備することを受諾した。これは世界の「反テロリスト戦争」のために、アフガニスタン以外でなされた最大の米軍の派遣である。ミンダナオへの米軍の派遣は、フィリピン軍兵士が対テロ戦技術と能力を向上させるために行われる「バリカタン演習02│1」と名づけられた合同軍事演習のためになされる、と大統領は述べた。しかし、バシラン島での軍事演習は六カ月にわたって続けられると言われており、それは以前から非難されている米軍寄留協定(VFA)や米比相互防衛条約を侵害するものである。

(2)米軍のミンダナオへの派遣の別の目的は、国際テロリストグループのアルカイダ・ネットワークと結びついていたとされているアブサヤフ・グループとの戦闘のためである。アブサヤフ・グループと国際テロリストを結びつけたのは米軍のみであり、そうした主張には確固たる証拠はない。アブサヤフ・グループは誘拐して身代金を取るといった活動を行っている地方的なありきたりのならず者集団であり、以前このグループはイスラム復興主義集団であった。

(3)米軍は軍隊だけではなく、強力な戦争装備をもミンダナオに送っている。それは、約束された装備よりもはるかに高度なものであり、バシラン島に軍事指令拠点を設立する全般的計画の一部である。かくしてミンダナオへの米軍の配備は一時的なものではなく、フィリピン諸島に高くつく永続的な基地を持たないままに彼らの基地を再び設立するものとなるだろう。たとえフィリピン憲法をあからさまに侵害しようとも、彼らは東南アジア諸国を支配し、中国への手の込んだ策動を戦略的に進めていくためにこの計画を遂行しているのである。

(4)アメリカが主導するミンダナオでの反テロ作戦は民衆闘争に対決する戦争であり、それは確実にバシラン州やフィリピンの多くの場所で一般住民を巻き込み、危害を加えるものになるだろう。米軍とフィリピン国軍は、いわゆる「テロリストグループ」に対する共同軍事作戦を行うだろう。それはバシラン州だけに限定されたものではなく、ミンダナオ全島で展開されるだろう。現在、米軍が支援する作戦はアブサヤフに対してのみ行われているわけではなく、ミンダナオの他の革命的武装グループに対しても行われている。こうして、それはミンダナオに現存する政治的・社会的危機をさらに悪化させるだろう。

(5)ミンダナオは、「ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン――東アジア成長地域」(BIMP―EAGA)で全面的に実施されている政府の新自由主義政策において重要な役割を果たしている。ミンダナオでの米軍が支援する軍事的攻勢は、アブサヤフ・グループに対するものだけではなく、すべての革命的グループを粉砕しようとするものであり、グローバリゼーションに反対する戦闘的活動に恐怖を吹き込もうとするものである。ミンダナオへの米軍の派遣は、アジアの地域自由貿易協定の一部としてのBIMP―EAGA新自由主義政策を全面的に実施する国際的資本家の構想の一部である。

 第四インターナショナルは、フィリピンへの米軍の配備を厳しく非難する。この国の安全保障を大きな危険にさらし、米軍の軍事攻勢によってミンダナオの人民の生命を脅かす政府指導者の無責任な行為は、フィリピン人民の広範な大衆の基本的人権を擁護するためのわれわれの連帯運動の基礎である。ミンダナオの三人民(モロ〔ムスリム〕、キリスト教徒、先住諸民族)が、いわゆるテロリストに対して軍事的攻勢を開始している米軍特殊部隊の存在のために恐怖に直面している中で、われわれは、すべての社会運動、革命的グループ、民衆の基本的権利を守るために闘っている諸組織が、いまや東南アジア地域、とりわけフィリピンにまで拡大したアメリカが主導するグローバル戦争を阻止するために、あらゆる形での連帯を表明することを呼びかける。
 われわれは、アブサヤフ・グループや他の原理主義グループ、右翼グループのテロリスト活動を非難する。そしてそれ以上にフィリピンに対するアメリカの直接介入を非難するものである。(二月二十八日)                     


ミンダナオ革命的労働者党指導者に聞く

ミンダナオへの米軍事介入とどのように闘っているか

 一月末、米軍は「アルカイダ・ネットワーク」の一翼を構成すると目されたアブサヤフ集団に対する対テロリスト戦争の一環として、フィリピン・ミンダナオへの軍事介入を開始した。「グローバル戦争」をアジア太平洋地域にまで拡大するアメリカ帝国主義の戦略に対して、フィリピンの民衆は反対の闘いを連日のように繰り広げている。以下は、こうした民衆運動の先頭に立っているミンダナオ革命的労働者党(RPM―M)の指導者である同志ハリーに「かけはし」編集委員会メンバーが二月末にヨーロッパで行ったインタビューである。ミンダナオ革命的労働者党は第四インターナショナルの支持組織。(本紙編集部)



――昨年の「九・一一」以後、アメリカのブッシュ政権は全面的な「対テロ戦争」を開始したのですが、この戦争がフィリピンにもたらしている影響についてまず話してください。

 その前に、フィリピンの米軍基地をめぐる状況について説明しましょう。在比米軍基地は一九九一年、アキノ政権の時代に民衆の闘いによって撤退しました。その後、ラモス政権の時代に、アメリカはフィリピンでの米軍のプレゼンスを復活させようとする圧力を加えてきましたがラモスはそれを拒否しました。その後一九九八年に米軍寄留協定(VFA)が締結され、米軍が寄港という名目でフィリピンに戻ってきたのは、エストラダ前大統領がアメリカの歓心を買い、支持を取り付けようと、VFAの締結と新自由主義政策の実施を選挙期間中に米政府に約束したためです。
 「九・一一」はフィリピンの民衆にも大きなショックを与えました。アメリカにも大規模なフィリピン人コミュニティーが存在するからです。とりわけフィリピン人の多数派であるキリスト教徒はムスリムに対する怒りに駆られ、「アブサヤフとムスリムをやっつけろ」という意識が広がりました。この中で、ムスリムとキリスト教徒の緊張関係も激化し、ミンダナオの紛争で犠牲者になっているムスリムの人びとへの人道的支援組織がビンラディンとの関係を取り沙汰される、といった事態も起こりました。
 こうした中で、アロヨ大統領は「九・一一」の直後に米軍支援を明らかにし、米軍の対アフガニスタン戦争便宜へを供与することを発表し、十一月にカタールのドーハで行われたWTO(世界貿易機関)の会議でもそれを確認しました。
 今年の一月に、米軍がフィリピン軍との合同軍事演習という名目でフィリピンに到着しました。まず北部ルソンで四十五日間の訓練をフィリピン軍とともに行い、つづいてミンダナオで六カ月間の「合同軍事演習」という対テロ掃討作戦に従事しているわけです。これに対して、議会では「演習」期間の長さへの批判、この「合同軍事演習」が米軍とフィリピン国軍という二つの並行的指揮系統の下で行われていることがフィリピン国内での外国軍の作戦を禁止している憲法に違反している、という疑問が提示されました。
 しかし政府はアブサヤフが行った誘拐や住民虐殺の映像をTVで繰り返し放映させたり、アブサヤフに誘拐されたアメリカ人の娘をフィリピンに招待して釈放を訴えさせたり、さらにはミンダナオの州知事や市長をマラカニヤン宮殿(大統領府)に招待して説得したりして、米軍導入の正統性を訴えました。今回の作戦が展開されているバシラン州の政府は米軍の配備に反対していましたが、政府にどう喝されて屈服してしまいました。アロヨ大統領は「アブサヤフに与するのか、それともアメリカに与するのかの選択だ」という最後通牒を突きつけました。

――アブサヤフ壊滅を口実に展開されている今回のミンダナオでの作戦は、他のムスリム組織や住民にも当然大きな影響を与えているわけですね。

 そうです。ミンダナオではモロ(ムスリム)人民の自治・自決を訴えているMNLF(モロ民族解放戦線)とMILF(モロ・イスラム解放戦線)があり、MNLFとの関係では和平が成立してすでに自治政府が樹立されました。またMILFとの関係では、和平交渉が進められていました。しかし「九・一一」以後、MILFとの交渉は中断されてしまいました。政府軍によるMILFへの攻撃が強化されています。
 MILFはバシラン島にも一部隊が展開していますが、もともとミンダナオのムスリム住民は自らの共同体を防衛するためにすべての人びとがなんらかの形で武装しています。それは彼らの社会的・文化的伝統ともいうべきものです。
 アロヨ政権や米軍は、彼らの軍事作戦を展開するために、私たちが関わっているモロ人権センターというNGOにも分断工作を行おうとしました。おそらくCIA要員である米大使館顧問がモロ人権センターのメンバーを米大使館に招待し、「私たちはあなたたちを金銭面で援助する用意がある」などと語ったのです。このNGOメンバーは話を聞いてそのまま帰って来ましたが、こうした工作は他のグループにも働きかけられています。
 さらに政府・米軍による攻撃はMILFだけでなく自治政府を構成したMNLFに対してもなされています。昨年秋、アロヨ政権はMNLFの議長であり自治区の知事でもあるノルミス・ウアワリを追放して別の人間に置き換えようとしました。ウアワリは現在逮捕・拘留されています。その理由は、彼が中東諸国との密接な関係を持っているということです。この中で政府軍とMNLFとの戦闘も激化しており、現在MNLFとMILFとの協調が発展しています。
 つまり米軍とフィリピン国軍の軍事作戦はアブサヤフに対してだけではなく、MILFやMNLFをもターゲットにしたものであり、米軍は強化された武器を国軍に供与しています。

――アブサヤフというグループの性格をどのように捉えていますか。

 一九九三年四月、ラモス政権の時代にMNLFはアフガニスタンにメンバーを派遣して訓練を受けさせました。彼らがアフガニスタンから帰ってきた後、一九九六年に政府とMNLFとの和平交渉が進んでいましたが、この人びとはMNLFの和平交渉に反対しました。アブサヤフを作ったこうした人びとの当初の主張は「ミンダナオをムスリムの土地に」というものでした。ミンダナオの人口七百五十万人のうち、三〇%近くがムスリムです。アブサヤフはこうしたムスリムに向かって「敵は政府とキリスト教徒だ」とする原理主義的アプローチを行っていました。
 アブサヤフの三人の創設メンバーのうち一人は明確な軍のエージェントであり、一人は原理主義者ですが、彼は五年前に殺されました。もう一人はMNLFの元司令官です。彼らは、海外のキリスト教団体からの援助物資を積んだ船を爆破したり、カトリックの神父を誘拐したり、海外の観光客を誘拐して身代金を取ったりする行動をするようになりました。この観光客誘拐事件では前駐比リビア大使が仲介して千万ドルから千五百万ドルの身代金がアブサヤフに支払われたとされており、彼らはそのカネで大量の武器や武装高速船を手に入れました。彼らは軍の攻撃の情報が入ると、この高速船を使ってマレーシアにまで逃亡しています。
 彼らはかつて「ミンダナオの独立」を主張していたのですが、今ではそうした政治主張を放棄したたんなる山賊・海賊集団やテロリストになってしまった、と言うべきでしょう。

――アブサヤフと国軍の一部高官との密接な関係も報道されていますね。

 そう、彼らのうち三人が軍のエージェントであることが確認されていましたが、うち二人はすでに殺されています。以前、フィリピンをローマ法王が訪問した時、彼らから法王暗殺計画が出されたことがあり、それが内部情報によって暴露されて結局未遂に終わったという話もありました。アブサヤフ内部の軍のエージェントによって暴露されたのです。

――米軍のフィリピンへの介入に対して、どのような反対運動が進められていますか。

 私たちは、ミンダナオの地域レベルでは、とりわけ米比両軍の作戦展開の中心になっているバシラン島とサンボアンガで連合組織を作って反対運動を主導しています。三月八日の国際女性デーには、全ミンダナオレベルでの「対テロ戦争」反対のキャンペーンを行います。
 全国的には一月に「平和のための全国連合」(National Gathering for Peace)が結成されました。そこには米軍基地撤去に重要な役割を果たしたタニヤーダ前上院議員などの諸個人や、アクバヤン(市民行動党)、FDC(債務帳消し連合)、サンラカス(BMP系大衆団体)、BMP(故ポポイ派)など、シソン派のフィリピン共産党(CPP)を除く広範な諸グループが結集しており、私たちもそれを支持しています。また党レベルでは、私たちミンダナオ革命的労働者党とフィリピン労働者党(故ポポイグループ)、フィリピン社会党(ポポイ派から分かれたソニー・メレンシオのグループ)、プロレタリア民主党(CPPから分裂したグループ)との間での「革命的統一戦線」の結成が合意されています。
 こうした中で、マニラ首都圏ではほぼ連日のように米大使館への抗議行動やデモが繰り広げられています。
 さらにフォーカス・オン・ザ・グローバル・サウスのウォールデン・ベローやATTACフランスのピエール・ルッセが呼びかけて、欧州議会の現地調査団がミンダナオを訪れる計画も立てられています。

――最後に、日本の反戦平和運動へのメッセージをお願いします。

 フィリピンに配備されている米軍は沖縄の米軍基地から来たものです。フィリピンへの米軍の介入は沖縄にある米軍基地がなければ不可能です。その意味で、米軍基地に反対する日本、沖縄の運動との連携は私たちにとって大きな力となるでしょう。ぜひ共同の闘いを追求したいですね。
 アブサヤフ壊滅を目的としている米比両軍の作戦にもかかわらず、すでにアブサヤフは拠点とされているバシラン島などにはいません。彼らはもうどこかに去ってしまいました。その中で、この米比の軍事作戦によって確認されているだけでも三人の一般人が殺され、多くの人びとが家や土地を奪われた難民となっています。ミンダナオでは長引く紛争によってすでに十万人以上が家や土地を追われた離散民となっており、この数は「対テロ戦争」によってさらに増えているのです。
 豊富な天然資源を持つミンダナオは、フィリピン政府の新自由主義政策のショーウインドーです。私たちの闘いは、新自由主義的グローバリゼーションと軍事化の双方に反対するものであり、反グローバリゼーションと反ミリタリゼーションはコインの裏表の関係にあります。そしてもう一つのコインは、アブサヤフ集団の犯罪的テロリズムに反対することです。


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